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現在、ヒーリングをテーマにしたアーチストは多数存在するが、そのスケールの大きさや活動範囲の広さにおいて、岡田和樹さんを上回る人物はおそらくいないだろう。
絵画・音楽・文学など、多方面で才能を発揮する岡田さんに話を聞いた。
神奈川県大磯町。潮風の漂うこの町に昨年、岡田和樹ギャラリーがオープンした
落ち着いた雰囲気のギャラリーの中には、彼の作品が展示されている。初対面で目を射抜くのはその鮮烈な色彩感覚。どの作品もまるで宝石のような赤・青・黄・緑のみずみずしい光彩を放っている。
――この作者が色覚異常と、誰が気づくだろうか?
「私は生まれつき第一色盲で赤がよく認識できないんです。でも正直言うと、緑もよくわからないんですよ……」
岡田さんは笑いながら言う。
「高校のとき、絵を描いていたら『なんで人の影をピンクで描いてるの?』と言われたことがありました。自分としては薄いグレーのつもりで描いていたんですが」
眼科医は当然ながら“画家はムリだね”と言ったというが、当人は気にせずに、むしろ色盲を自分の特性として楽しんだそうである。
「『これ何色に見える?』『これは何色?』……この質問は、今までに何百回を超え、何千回と聞かれました。私としては自分に見える色を素直に答えるだけで皆が笑ってくれるので、むしろその状況を楽しんでいました」
ギャラリーの中にはさわやかなピアノ曲が流れている。ときにシンセサイザーの電子音が混じり、独特の空気を作り出す。
この曲も、岡田さんが自らが作ったものである。
画家にして作曲家――岡田和樹の世界は際限がない。
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岡田和樹さんが何者であるかを、一言で表すのは難しい。彼は画家・音楽家・詩人・写真家であり、ときにヒーラーとしても能力を発揮する。
「小学校5年生からは、将来は公務員になるつもりでした」彼は言う。
そんな彼が変わったのは大学に入学してのち。経済学部に入ったのだが、ここは自分のいるべきところではないと感じたそうだ。
「それで大学にはあまり行かなくなり、音楽に熱中しました。将来プロになる意志を固めて」 みずからバンドを作り1年がかりでメンバーを集めた。彼が熱中したのはプログレ(プログレッシブ・ロック)と呼ばれるジャンルの音楽で、彼は自分で曲を作りショルダーキーボードを弾いた。
そんな彼の意識に変化が起こったきっかけは、友人の自殺という衝撃的な事件だった。
「私が驚いたのは、自殺した彼に対する周囲の冷たさでした。怒りを覚えました」
行き場のない感情の高まりを、彼はピアノにむけて叩きつけた。夜も昼も鍵盤を弾きまくった。
彼いわく“キーボードを短くしたものを自分で作り、電車の中でも弾いていました”。
方向性の違いに作ったバンドも解散した。それまでハンディと思ったことがなかった同じ色覚異常の人たちへの偏見や差別に気づいたのもこのころだった。
「自分が創作できるあらゆる芸術作品、エネルギーを通して人間としての安らぎ・思いやり・癒しといったものを伝えていこうと決意しました」
音楽とともに絵も描き続け、さらに身障者の介護ボランティアも始める。各地の施設を訪れ、難病や信仰を持った人たちと出会い、自分の曲を聴いてもらった。
大学卒業後は障碍(障害)者自立支援ホームに介護ボランティアとして同居、同時に画家・作曲家・ピアニストとして活動を始めた。
「さまざまな障碍者と交流しましたが、楽しい思い出ばかりが胸にあります。むしろ周囲の人間の一元的な見方や無理解な言葉・言動に苦しみました。ハンディのあるなしにかかわらず、人間が多面的な存在であるということを忘れて一面 |
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だけを見て非難する態度に心が痛みました。
このような“意識のバリア”こそハンディや病気の有無にかかわらず、人種や信仰で偏見や差別を受けた人がみな体験したことではないでしょうか」
現在の彼は豊饒な才能を活かして、作曲・絵画・写真などアート全般で活動している。多彩な活動は驚くばかりだが、その根幹は彼にとってすべて同じものであるという。
「私のやっていることは根底は同じなんです。エネルギーは一緒。でもライトが別々で、それぞれ違う角度から同じ対象を照らしているということなんです」彼は言う。
「私が対象を見ているとき、それはあらゆる角度からイメージできるんです。縦からも横からも上からも」
彼の絵画はときに写実的だがときにファンタジック、抽象的とも言える描写に富んでいる。最近はCGなども利用して、この世ならぬ情景を作り上げている。
「こうして人と相対しているとき、私の意識は相手の細胞にまで入っているんですよ」
彼は絵の表面には関心がなく、絵の背後にあるものに興味があるという。
「好きな画家はピカソです。彼の絵が好きというより、絵の背後にあるそのときのエネルギーが好きなんです」
岡田さんの作品は一般にヒーリングアートとジャンル分けされるものだが、表面的な光や音よりも、その背後にあるものを大切にしたいという。
「目に見えない光、耳に聞こえない音を大切にしたい。そういうものは五感に直接的に触れなくても、確実に伝わっていると思います。
私の作品を見て下さる人でも『なんだかわからないんだけど、涙が出る』と言って下さいます」
ピアノを演奏するとき、自分が粒子になって音と一緒に振動している感覚であるという。その繊細な感性は余人の想像を超えている。
彼は今、難病の方に無料で自分の絵葉書を贈呈するというボランティアを行っている。
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心の道
あなたの人生
彼の絵葉書を受け取った人が、奇跡的に病状が回復するといったことが決して珍しくない。
彼のホームページを見た人、あるいはコンサートを訪れたりした人が、掲示板を通して彼にメッセージを送る。一つひとつのメッセージに、彼は誠実に応対する。
彼の言葉は思いやりにあふれ、あたたかいエネルギーに満ちている。
「愛、という言葉を使っても、愛は伝わりにくいものです。それよりいかにわかりやすい言葉でその人の心に訴えられるかを考えます」
日常の多くの時間を、ネットを通した対話に使っているという。
「私は音楽や絵画を通して愛や安らぎのメッセージを発信していますが、それには普段からの活動が大切だと思うんです。インターネットでの対話は、私自身がパワーアップするためにもぜひとも必要なことなんです」
愛の伝道師の活動は、多くの人の注目を集めている。
※ 10月2日には新潟上越市の小川未明氏記念館のオープニングコンサートで即興演奏を、10月19日には横須賀芸術劇場で車椅子女優の萩生田千津子さんとジョイントコンサートを行います。
岡田和樹
1965年、神奈川県生まれ。画家・作曲家・詩人・写真家・ヒーラー。ヒーリングアートの第一人者として全国各地で個展やコンサートを行う。日本コロムビア(株)D・C・S感性研究所シニア・アドバイザー。CDアルバム「永遠なるとき」(ヘブン)。個展、原画展では絵画やCG、詩画、書画、写真、音楽の他流木オブジェ、モダンアート作品を披露する。コンサートではオリジナルや即興演奏、詩の朗読やヒーリング演奏が中心。
ヒーリングアート館 岡田和樹ギャラリー
神奈川県中郡大磯町東町3-9-11
電話0463-61-8136 要予約
ホームページ http://www.kazukiokada.com
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(C) ヒーリングアート館 岡田和樹 現代アートギャラリー
https://www.kazukiokada.com/
【上記の特集記事】
「Five Senses 」Vol.16 2005年9月
発行:JHRS日本ヒーリングリラクゼーション協会
"Five Senses" Japan Healing Relaxation Society. 2005.Sep |